今日は、「宣言」の大切さについてお話しします。
「自分が何をしているのか説明できなければ、他人が自分を定義してしまう」。これは、シャネルの元クリエイティブ・ディレクター、ヴィルジニー・ヴィアールが、新著で初めて退任について語った言葉だそうです。売上を伸ばしても、名前が残らなかった人の反省。ここに、個人起業家のブランディングの核心があると、私は思っています。
この記事の要点
- 実績や数字があっても、自分が何をしているのかを自分の言葉で説明しなければ、評価は他人に決められてしまう。
- 会社員は代替可能な人の集まりで働く。他人のブランドの枠の中にいるかぎり、自分の名前は残りにくい。
- 無形サービスのブランドとは、あなたそのもの。生き方がスタイルになり、長い年月をかけて「資産」になっていく。
目次
シャネルに37年いた人の、突然の退任
ヴィアールはシャネルに37年間在籍し、カール・ラガーフェルドの右腕として働きました。2019年にラガーフェルドが亡くなると、その後継者になります。
そして2024年、昼食の席で、シャネルの会長アラン・ヴェルトハイマーから解雇を告げられます。彼女にとっては、あまりにも突然の勧告でした。
数字だけを見れば、彼女が担当していた時代のシャネルは、失敗でもなんでもありません。2023年の売上は197億ドルで、前年比16%増。既製服部門も大きく伸びていたといいます。
それでも、コレクションへの批判はインターネット上で広まり、退任をめぐる憶測も飛び交っていたそうです。
売上を伸ばしても、名前は残らなかった
さらに屈辱的なのは、シャネルの歴史を語るときに並べられる名前です。
ココ・シャネル、カール・ラガーフェルド、マチュー・ブレイジー。シャネルを築いた3つの時代として並べられるのはこの3人で、ヴィアールはそこに入っていません。
彼女は37年という長い年月のなかで、自分のコレクションも、ショーも、コラボレーションも、いつか残るはずだと信じていたそうです。けれど評価は、秀逸な3人のデザイナーの「インターバルに存在していただけ」というものでした。
生々しいですよね。でも、うん、あるよね、そういうこと……と思いませんか。
「自分が何をしているのか説明できなければ、他人が自分を定義してしまう」。これは、解雇されたあとに彼女自身が語った、重要な反省です。
会社員も同じだな、と思った
この話を読んで、会社員も同じだな、と思いました。私自身も、そういうことを考えていたのかもしれません。
私はクリエイティブディレクターという肩書で仕事をさせてもらっていましたが、会社員でいつづけるかぎり、いずれ定年を迎えます。
私がいなくたって、会社は回る。逆に、一人いなくなって会社が回らなくなるなら、その会社に問題がある。つまり、代替可能な人たちが集まっている場所、それが会社です。
給料をもらって働き、時間を切り売りしているわけですから、それに反発も怒りもわきません。ただ、自分の生き方としては、やっぱり面白くないな、と思っていました。
ヴィアールも、シャネルを離れた今は「本当に幸せ」と語っているそうです。離れたことで、本当の自分に戻れたのかもしれません。
他人のブランドの枠の中で生きるということ
もうひとつ。ヴィアールは、「シャネル」という先人がつくったブランドの中で生きていたから、憂き目に遭ったと言えるかもしれません。
もし、自分で立ち上げたブランドだったら?
シャネルほどの影響力や存在感はなかったとしても、自分のやりたいこと、言いたいことをカタチにできる自由と喜びは、あったかもしれません。
私たちが自分のブランドをつくるとき、何かに影響されることはあっても、どこまでも「自分とはなんぞや」という原点を見つめること。他人のブランドに振り回されたり、他人のブランドの枠の中に自分を押し込んだりしないこと。ヴィアールは、そのことを教えてくれたような気がします。
なぜ、ハイブランドの中でシャネルが選ばれるのか
無形サービスのブランドとは、あなたそのものです。
シャネルの服と同じくらい、ココ・シャネルの思想や美学を愛する人が、何十万、何百万円もする服やバッグを買います。
バッグという商品なら、エルメス、ルイ・ヴィトン、グッチと、名だたるブランドはたくさんあります。そのなかで、なぜシャネルが選ばれるのか。
それは、ハイブランドのなかでもシャネルが、もっとも「ココ・シャネル」という生々しい人間の存在を感じられるからではないかと思います。エルメス、ルイ・ヴィトン、グッチ、ロエベと言われても、その創始者の顔は、シャネルほどには思い浮かばないのではないでしょうか。
ブランドは、生き方がつくる「資産」
自分というスタイルを創っていく。それは、とってつけたように撮影した写真でも、高級な服でもなく、生き方そのものです。それが、スタイルになります。
ブランドは一朝一夕につくられるものではなく、長い年月をかけてつくられる「資産」です。その資産をつくっていくために、自分を磨いていくこと。
ビジネス、お金、自分。これがすべてリンクするブランディング。自分がめざしたいゴールへ、自分の理想とする自分へ、連れていってくれる。そんな現実創造の力を備えたブランディング。それが、私がやっているブランディングです。
まとめ
実績は、黙っていても伝わるとはかぎりません。自分が何をしているのかを、自分の言葉で宣言しなければ、他人があなたを定義します。
他人のブランドの枠の中ではなく、「自分とはなんぞや」という原点から、生き方そのものをスタイルにしていく。それが、名前の残るブランドのつくり方です。
よくある質問
実績や数字があれば、ブランディングは必要ないのでは?
ヴィアールの例が示すとおり、売上を伸ばしても名前が残らないことはあります。何をしているのかを自分の言葉で説明しないかぎり、評価は他人の言葉で決まってしまいます。
個人起業家にとってのブランドとは何ですか?
無形サービスのブランドは、あなたそのものです。商品のスペックではなく、あなたの思想や美学、生き方が選ばれる理由になります。
「宣言」とは、具体的に何をすることですか?
自分が何をしている人なのか、何のためにやっているのかを、自分の言葉で言い切ることです。言い切らないうちは、他人の解釈があなたの肩書きになります。
ブランディングはすぐに効果が出ますか?
ブランドは一朝一夕にはできません。長い年月をかけて積み上がる「資産」です。だからこそ、他人の枠ではなく自分の原点から積み上げることが大切です。


